最近読んだマーケティングの本が非常に参考になったので紹介します。それは芹澤連さん著の『戦略ごっこ マーケティング以前の問題』です。マーケティング、商品開発、営業企画に携わる方には特に共感できる部分が多い一冊で、ドキッとするような指摘が盛りだくさん。今回は、その中でも「差別化」についての記述が特に印象に残ったので、そちらをメインにお話ししたいと思います。
皆さんも普段、自社のサービスや商品をどう他社と差別化するか、あるいは従来品と何が違うのかを明確にしてお客様にアピールしようと考えることが多いのではないでしょうか。もしかしたら「差別化しろ」という上司からの指示を受けたこともあるかもしれません。差別化さえできれば、自分の商品が選ばれるはずだ!と思いがちです。
しかし、ちょっと思い返してみてください。普段の買い物で、どれだけ各商品の違いを意識していますか?私は、スーパーで納豆を買うときは「おかめ納豆一択」、中華麺なら「札幌生ラーメン」と決めています。他にも色々な商品があるのは知っているのに、差別化ポイントなんて気にしていません。実際、消費者として私たちは、あまり差別化を意識していないのが現実です。
売り手になると「差別化できれば売れる」と思いがちですが、買い手、お客様の視点では、差別化ポイントは重要ではないことが多いのです。「安い」「美味しい」といくらアピールしても、それは売り手の都合。お客様にとってはあまり関係ないのです。作り手としては、つい「前より安くなった!」「もっと美味しくなった!」とアピールしたくなるのですが、現実は冷酷で、その努力はお客様に伝わらないことがほとんど。もちろん、じっくり比較するお客様もいるでしょうが、大多数の人は深く考えずに買い物をしています。
では、何を基準に商品を選ぶのか?それは「想起」です。納豆なら「明日の朝に食べる納豆を買っておかなきゃ」、中華麺なら「お昼にラーメンを作ろう、子どもも喜ぶし」というように、商品の具体的な性能よりも、使うシーンや文脈をイメージしているのです。
だからこそ、商品を売るためには、お客様にその商品を使うシーンをイメージさせることが大切です。「過去最高のうま味成分を含む納豆」といった品質のアピールだけでは、お客様の記憶に残りにくい。「毎朝の納豆」や「子どもが喜ぶラーメン」といった、具体的な文脈に載せることで、商品を思い出してもらいやすくなります。
もちろん、商品開発の段階で競合分析をし、他社との差別化を図ることは大切です。それがなければ、何のために開発しているのかわかりません。ただし、作り手のこだわりが、お客様の購買動機とは限らないことを忘れてはいけません。ここは見落としがちなポイントです。
企画書を社内で共有し、チラシやコピーを検討する際にも、「お客様のベネフィットを追求しているつもり」でも、ついつい自社の頑張りをアピールしてしまうことが多いのではないでしょうか。ぜひ、この『戦略ごっこ』を読んで、自社のマーケティングを振り返ってみてください。思わずドキッとする人、意外と多いと思います。
ただし、注意点があります。マーケティング初心者の方には、この本は少し難しいかもしれません。理由は3つあります。まず、カタカナや専門用語が多く、読み進めるのが大変だということ。「STPを決める」と書かれていて、STPが何かわからないと、いちいち調べることになり、疲れてしまいます。次に、定番のマーケティングフレームワークを理解していないと、著者の「実は○○というエビデンスはありません!」という衝撃的な指摘が理解できず、「えっ!?」と感動することができません。最後に、エビデンスを重視しないタイプの人には、この本はあまり響かないかもしれません。マニュアルよりも経験重視、数字よりも直感派の方には、エビデンスをベースにしたこの内容はあまり響かないでしょう。
以上、この本を読まない方がいい人の特徴でした。
最後に、この本は非常に学びの多い内容なので、ぜひ皆さんも一度手に取って、自身の業務と照らし合わせてみてください。意外な発見があるかもしれません。マーケティングに携わっている方なら、きっと共感できるはずです。
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